トランクルームなどの倉庫業を営む業者は「倉庫業法」に準じてサービスを提供しています。
倉庫業法は、荷物を預ける個人や企業の利益を保護するための重要な法律です。
とはいえ、「倉庫業法という名前を初めて聞いた」「どんな内容なのかは詳しく知らない」といった方も少なくないでしょう。
そこで今回は、倉庫業法とはどういうものなのか、また倉庫業者を利用する際の注意点などについて解説します。
倉庫業法とは
倉庫業法とは、「営業倉庫」に対して国土交通省が定めた法律のことです。倉庫業法の第一章・第一条に、この法律を定めた趣旨が以下のように記載されています。
この法律は、倉庫業の適正な運営を確保し、倉庫の利用者の利益を保護するとともに、倉荷証券の円滑な流通を確保することを目的とする。
引用:倉庫業法 第一章総則 第一条(https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=331AC0000000121)
つまり、倉庫業法とは倉庫業者に対して厳しいルールを設けることで、業者を利用する個人や企業が不利益を被らないようにすることを目的としています。
これを守らなければならない者は、条文によって次のように定められています。
- すでに登録している倉庫業者
- これから倉庫業者を運営しようとしている人
- 倉庫業者に似たビジネスをやろうとしている人(トランクルーム含む)
- 国土交通省
そもそも「倉庫業」とは
そもそも「倉庫業」とは、「報酬をもらい他人の荷物を保管するサービスを提供する事業」のことです。
個人や企業の荷物を預かるだけのトランクルーム業者もあれば、預かっている荷物の流通加工(ラベル貼りや衣類の修繕など)まで請け負っている業者もあります。
あくまで「荷物の保管」を目的とした事業が倉庫業に当たるため、たとえばクリーニング店の衣類保管のように、付随的なサービスとして保管している場合は倉庫業に該当しません。
したがって、クリーニング店は倉庫業法の対象ではありません。
倉庫業を始めるには国土交通省の登録が必要
登録されていない倉庫を営業倉庫として使用することは禁じられています。倉庫業を始めるには、倉庫業法に基づき国土交通省から認定・登録を受けなければなりません。
しかし、実際には単なる空きスペースを営業倉庫として使用している危険な業者も存在しますので注意しましょう。
このように国からの登録を受けていない業者は、荷物を安全に保管してくれるとは限りません。
「安全な保管」をうたっていても、防災基準などが満たされていない可能性が高いからです。
最悪の場合、預けていた荷物が破損してしまうことも考えられますので、業者を利用する場合には「国土交通省からの認定・登録を受けているか」に十分注意しましょう。
倉庫業法における「自家用倉庫」と「営業倉庫」の違い
倉庫業法において、倉庫は「自家用倉庫」と「営業倉庫」の2つに分かれます。
- 自家用倉庫:倉庫の所有者が「自分の荷物」を保管しておく
- 営業倉庫:倉庫の所有者が「他人の荷物」を保管しておく
自家用倉庫は、名前のとおり一般家庭などで使用される倉庫のことで、おもに自分の荷物を保管するものです。一方、営業倉庫は他人の荷物を保管する倉庫を指します。
この2つの違いについて詳しく確認しておきましょう。
施設や設備の丈夫さの違い
営業倉庫の施設や設備は、倉庫業法のなかで一般建築物よりも厳しい基準が設けられています。
簡単に言えば「自家用倉庫よりも営業倉庫のほうが頑丈に作られている」ことになります。
火災や水漏れ、害虫、カビなどの事故を起こさずに、万全の状態を保てるように定められています。
火災保険の加入義務の違い
営業倉庫の認定を受けるには、倉庫の所有者自らが火災保険に加入しなければなりません。
これは、国土交通省が定めている「標準倉庫寄託約款」に記載されています(標準倉庫寄託約款について詳しくは後述します)。
登録を受けていない業者は上記の約款を国土交通省に届け出ていないため、火災保険に入っていない可能性も考えられるでしょう。
契約する前には、火災保険の加入有無を必ず確認しておくようにしてください。
営業倉庫は「倉庫寄託約款」の届け出が必要
営業倉庫を使用するには「倉庫寄託約款」を国土交通省に届け出なければなりません。
倉庫寄託約款とは、業者とサービス利用者との間で契約書を結んでいなくても、倉庫業者が最低限守らなければならない約束を記したものです。
万が一、火災や窃盗などのトラブルがあった場合は、倉庫寄託約款を基準に処理していきます。
また、国土交通省では倉庫業者のために「標準倉庫寄託約款」を事前に用意しています。
多くの業者はこの標準倉庫寄託約款を届け出ているため、細かいルールを知りたい方は国土交通省ホームページより内容をチェックするとよいでしょう。
参考:国土交通省(https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/butsuryu05100.html)
まとめ
今回は倉庫業法について解説しました。
倉庫業法は、業者を利用する個人や企業をトラブルから守るための法律ですが、なかには倉庫業法に準じていない業者もあります。
業者を選ぶ際には価格や立地だけで判断せず、真っ当な運営を行っているかどうかに十分注意してください。
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